主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】近年,麻酔薬として推奨されている塩酸メデトミジン,ミタゾラム および酒石酸ブトルファノールを混合した三種混合麻酔薬(M/M/B)は,メデトミジン拮抗剤の投与により麻酔状態から容易に覚醒させることができるが,麻酔時および覚醒後の体温低下が著しいことが報告されている。そこで本研究では使用実績のあるアバチンと,このM/M/Bを用いて投与後の体温変化および体温低下が胚移植成績に及ぼす影響を調べた。【方法】ICR系統の雌(11週齢以上)および精管結紮雄(3~12ヶ月齢)を用いた。麻酔としてM/M/B(0.3/ 4/5 mg/kg)または2.5% アバチン(0.014 ml/匹)を腹腔内投与し,M/M/B投与個体には投与35分後にメデトミジン拮抗剤(0.3 mg/kg)を投与した。実験1では投与5分後から保温の有り無しで直腸温を測定した。実験2では投与5分後からC57BL/6Jの凍結融解2細胞期胚の移植を行い,手術時の保温の有り無しで直腸温を測定し,産子率を比較した。【結果】実験1で保温しない場合はM/M/B投与個体では拮抗剤を投与するまで直腸温が低下し続け,アバチンに比べて有意に直腸温が低く,最低体温が30℃以下になる個体がいた(6例中4例)が,保温することでいずれの麻酔薬でも体温低下が抑えられた。実験2で手術時に保温しない場合(麻酔投与30分後から保温),M/M/B投与個体ではアバチンに比べて保温前および保温後の直腸温が有意に低かったが,麻酔の種類で産子率に有意な差は見られなかった(44% vs 43%)。さらに投与直後から保温を行った場合でもM/M/B投与個体で覚醒後に直腸温の有意な低下が見られたが,産子率に差はなかった(62% vs 64%)。今回の実験条件では,保温の有無にかかわらずM/M/Bはアバチンに比べて顕著な体温低下の原因となるが,産子率に差は見られなかった。しかしいずれの麻酔薬でも,移植手術時に保温を行わないと産子率が有意に低下することが分かった。