主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】精液性状の評価が良好でも人工授精に使用すると受胎性の低い牛精液を発見する技術の開発が求められている。我々は,精子核DNAのメチル化可変部位(CpG)に着目し,CpG部位のメチル化率が新たな受胎性の指標となりうるか検討を続けている。【方法】黒毛和種雄牛で人工授精後の受胎率が判明している凍結精液17サンプルについて,ヒト用メチル化マイクロアレイ(EPIC)に搭載されている各CpG部位のメチル化率を評価し,単回帰分析により個々のCpG部位における受胎率との関連性を評価した。次に,メチル化率に有意な差のあったCpG部位を用いてクラスター分析を行い,受胎率が50%以上(HF; n=9)と40%未満(LF; n=8)のグループについて分類が可能か検討した。一方,EPICで抽出したターゲットCpG部位を含む周辺領域について全ゲノムバイサルファイトシークエンス(WGBS)結果からメチル化可変領域のみを抽出した上で,メチル化率の簡易分析法(COBRA法)により分析が可能なCpG部位を開発するとともに,個々のCpG部位について受胎性との関連性を調査した。【結果】ヒト用メチル化マイクロアレイ結果を用いた受胎率に対する回帰分析の結果,CpG部位のメチル化率と受胎率との関連が認められ(P<0.01)かつメチル化率に0.3以上の差のあるCpG部位が143箇所抽出された。これらのCpG部位のメチル化率から回帰式により推定された受胎率の平均値と実際の受胎率との相関係数はr=0.87であった。次に,クラスター分析を行ったところ,まずLFグループの一部が分岐し,さらにLFとHFグループが分岐する3つのクラスターが構成されたが,LFグループのうち1頭はHFのクラスターに分けられた。一方,WGBS情報から新たに簡易分析が可能な5箇所の受胎性評価指標の候補となるCpG部位を開発した。以上の結果から,受胎性評価の精度が向上し精子DNAのメチル化状態が雄牛の受胎性を評価する項目のひとつとなることが示唆された。