主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】活性酸素種に起因する酸化ストレスは,精子の受精やその後の胚発生に悪影響を及ぼす。我々は以前に,抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)の凍結希釈液への添加が,低発生率を示す精液の体外受精(IVF)成績を改善することを報告した。一方で,それらの精子の質と胚発生能の関係は不明であった。本研究では,凍結希釈液へ添加したGSHが精子へ及ぼす影響を明らかにするために,凍結融解後の精子の運動性,先体正常性,DNA正常性およびIVFによる胚発生能を評価した。【方法】精液は種雄牛4頭(A,B,C,D)より採取した。凍結希釈液に0(無添加),1,5および10 mMのGSHを添加して凍結および融解を行った。精子の運動性は精子運動解析装置で計測し,先体の正常性はPIとPNAによる二重染色で,DNA正常性は断片化したDNAを染色するTUNEL法で評価した。また,と畜場由来卵巣より採取した卵子を用いたIVFを行い,卵割率および胚発生率を評価した。【結果】融解後の精子の運動率および運動速度は,3頭(A,C,D)においてGSHの添加濃度が高くなるに従い低下する傾向であった。GSHの添加による先体正常性への影響はみられなかった。DNA正常性は全ての個体においてGSHの添加により低下する傾向であり,無添加で5%以上のDNA断片化率のみられた2頭(A,C)ではGSHの添加濃度に従いDNA断片化率が増加した。種雄牛Aでは10 mMの添加により無添加区と比較して有意に高いDNA断片化率となった(P<0.05)。一方でIVF成績はGSH添加により向上し,2頭(A,C)においてGSH添加区で無添加区と比較して高い卵割および胚発生率となった(P<0.05)。以上より,凍結希釈液へのGSHの添加は,もともと品質の低い凍結精液に対してDNA正常性を低下させるが,IVF成績を向上させる効果があることが示唆された。