主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】卵子の発生能はそれを取り囲む卵胞細胞および卵胞液によって制御されている。これまでに,ウシにおいて卵胞発育処理を施すことで,卵丘細胞の遺伝子発現プロファイルが変化し,卵子の発生能が向上することを明らかにした。一方,卵子の発生能と卵胞液とのシグナリングネットワークは詳細になっていない。本研究では卵胞発育処理を施したウシ卵胞液のメタボローム解析を行うことで,卵子の発生能に関与する卵胞液の代謝的特徴を解析した。【方法】異なる卵胞発育処理を施した個体の卵胞液をメタボロームにより解析した。未処理,FSHの漸減投与(FGT1),FSHの単回投与(FGT2)を実施した個体から,経腟採卵(OPU)により卵胞液を採取した。卵胞液をCE-TOFMSによるメタボローム解析に供した。【結果】 FGT1およびFGT2共に卵胞サイズが増大した。メタボローム解析の結果,130の代謝産物が検出された。その得られた代謝産物の主成分分析の結果,FGT1およびFGT2間で違いは認められないものの,卵胞発育処理と未処理間で違いが認められた。全体的に卵胞発育処理で代謝産物の減少が認められた。卵胞発育処理の方法に関わらず卵胞発育処理を施すことで,卵胞液中のグルコースの代謝産物であるG6Pおよび乳酸,ならびに酸化ストレスマーカーである酸化型グルタチオン濃度の低下が認められ,特にFGT1でこれらの濃度が低かった。このことは,FGT処理を施すことで,卵胞細胞のグルコース代謝が抑制されること,酸化ストレスが抑制されることを示唆している。また,それぞれの実験区に由来する卵胞液を成熟培地に添加した実験では,FGT1の卵胞液を用いた場合で,排卵誘導因子であるamphiregulinによって刺激される卵子の発生能が最も高かった。以上,卵成熟に先駆けた卵胞発育処理により卵胞細胞の代謝プロファイルが変化すると共に,その卵胞液を含む卵胞微小環境が卵子の発生能獲得に関与することが示唆された。