日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-72
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ポスター発表
分娩後のウシ子宮内膜における老化細胞の蓄積レベルの変化
*加治佐 実希舘林 亮輝阿部 良哉森田 康広大蔵 聡松山 秀一
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抄録

【目的】経産牛の受胎率は未経産牛と比較して低く,その一因として分娩後の子宮修復過程において何らかの不具合が生じている可能性が考えられる。マウスでは,妊娠時の子宮において不可逆的に細胞周期を停止した細胞である老化細胞が出現し,分娩後,除去されほとんどが消失する。さらに,分娩後に老化細胞が除去されずに蓄積した場合には,その後の妊娠率が低下することが示されている。老化細胞は,様々なサイトカインやプロテアーゼ等を分泌して周囲組織の炎症や腫瘍化を促進するため,老化細胞の蓄積は周囲組織に悪影響を与えると考えられる。これらのことから,ウシにおいても妊娠の経過に伴い子宮内膜に老化細胞が蓄積し,分娩後における老化細胞の除去不良が受胎率を低下させる一因となっている可能性が考えられる。そこで,本研究ではまず,分娩後のウシ子宮内膜における老化細胞の蓄積状況を明らかにすることを目的とした。【方法】正常分娩した黒毛和種雌牛4頭を用いた。分娩日を0日として分娩後10,30,50,80日目に子宮内膜組織をバイオプシーによって採取し,SA-β-gal染色によって老化細胞を検出した。各切片で任意の区画(352×264 µm)の総細胞に対する老化細胞の割合を算出した。【結果及び考察】本実験で供試した4頭全ての分娩後の子宮内膜組織においてSA-β-gal陽性細胞の存在が確認された。さらに,子宮内膜細胞におけるSA-β-gal陽性細胞の割合は分娩後10日目で53.4%と最も高く,その後,分娩後30日目で23.1%,50日目で4.2%,80日目で2.3%と日数を経るにつれて低下していた。以上の結果から,ウシにおいても胎盤形態の異なるマウスやヒトと同様に妊娠子宮で老化細胞が出現し,分娩後に老化細胞が消失すると考えられた。マウスでは,マクロファージが分娩後の子宮内膜における老化細胞除去に関与することが示されていることから,現在,ウシにおいても同様の老化細胞除去機構が存在するのか検討をすすめている。

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