主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】分娩間隔の延長は畜産経営に負の影響を与えるため,分娩後なるべく早い時期に受胎させる必要がある。ウシにおいて分娩により損傷した子宮の修復程度は超音波画像診断による子宮サイズや悪露の残存から判断可能だが,受胎可能性までは判定できない。上皮細胞膜抗原または粘液糖鎖タンパクとして知られるムチン1(MUC1)は,内腔に面した上皮細胞の頂端側表面に細胞膜貫通型タンパクとして局在し,その細胞外ドメインの立体構造から病原体の接触や炎症反応を調節するとされ,またマウスやヒトにおいては子宮内膜への胚の着床を制御することが報告されている。本研究ではMUC1のウシにおける分娩後子宮修復指標としての適用性を探るために,子宮内膜上皮細胞におけるMUC1の分娩後経時的発現変化を解析した。【方法】最初にウシ子宮内膜におけるMUC1の局在を調べるために免疫組織化学染色による解析を行った。次に分娩後自然哺乳中の黒毛和種母牛において超音波画像診断による卵巣・子宮評価を行い,初回排卵,初回発情,悪露搬出をモニタリングすることで分娩後卵巣機能回復および子宮修復を評価した。また血中プロゲステロン濃度測定によって卵巣周期を推定した。上記と並行して,分娩後20日目より10日毎に細胞診用サイトブラシによる子宮体部内膜上皮細胞の採取を行った。子宮内膜上皮細胞におけるMUC1発現はRT-qPCRにより解析した。【結果】マウス等の他の動物種における報告と同様に,MUC1はウシにおいても子宮内膜上皮細胞の頂端側表面に局在していた。子宮の悪露消失および初回排卵は分娩後40日目までに概ね完了していた一方で,MUC1発現は分娩後20日目より50日目まで一貫して上昇した。分娩により損傷した子宮内膜はMUC1の発現上昇と共に経時的に回復したことから,MUC1が子宮修復の分子的指標となりうることが示唆された。さらに,子宮の悪露消失・卵巣機能回復後もMUC1発現上昇が継続することから,子宮修復のより詳細な分子メカニズムの理解が必要であることが示唆された。