主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】哺乳類の妊娠と着床の成立には,胚と子宮の正常な接着が必須である。これまで栄養膜細胞の細胞膜上に発現する多くの接着因子が同定されてきたが,未だ妊娠率の向上には至っていない。また,栄養膜細胞が着床を誘導する因子を分泌することが考えられているが,分泌型の接着因子についての詳細は不明である。そこで,反芻動物の栄養膜細胞が分泌する接着タンパク質を網羅的解析を用いて同定し,新規の接着制御モデルを探索することを目的とした。【方法】ヒツジの妊娠15日目(接着前),17日目(接着中),21日目(接着直後)の栄養膜細胞と妊娠15, 17日目の子宮灌流液(UF)を回収した。RNAシークエンス解析(RNA-seq)とプロテオミクス解析(iTRAQ)により,栄養膜細胞で発現する転写産物とUF中のタンパク質を網羅的に解析した。さらに,既報の子宮上皮細胞のRNA-seqデータと比較し,栄養膜細胞のみから分泌されるタンパク質を抽出し,機能解析した。また,MT染色とPTAH染色を用いて妊娠子宮組織切片におけるフィブリンを検出した。【結果・考察】妊娠15,17日目から採取した栄養膜細胞とUFにおいて,それぞれ13553,14663種類の転写産物と2147,2148種類のタンパク質が検出された。子宮上皮細胞のRNA-seqデータとの比較から,妊娠15,17日目においてそれぞれ48,34種類のタンパク質が栄養膜細胞のみから分泌されることが明らかとなった。機能解析の結果,fibrinolysis(GO:0042730)が上位に検出され,このGOに含まれるAPOH,F2,PLG,SERPINF2,FGAの栄養膜細胞における転写産物の発現量は妊娠15,17日目と比較して妊娠21日目において有意に上昇した。MT染色とPTAH染色の結果,妊娠21日目において栄養膜細胞と子宮上皮細胞の接着部位においてフィブリンが観察された。以上より,胚と子宮の接着制御に血液凝固と繊維素溶解に関わるフィブリン形成制御が関与することが考えられた。