主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】栄養膜幹(TS)細胞は,マウス胚盤胞の栄養外胚葉から初めて樹立され,胎盤発生機構を解明するツールとして広く用いられてきた。近年,当研究室ではカニクイザルの胚盤胞からTS細胞(macTS細胞)の樹立に成功した(Matsumotoら,2020)。ヒトTS細胞およびmacTS細胞においては,マウスTS細胞の分化能維持に重要な転写因子ネットワークを構成するCDX2やELF5の発現が見られないことから,霊長類TS細胞特異的な転写因子ネットワークの存在が予測される。そこで我々は,macTS細胞のRNA-seqデータと,カニクイザル胚盤胞の栄養外胚葉におけるシングルセルRNA-seqデータ(Nakamuraら,2017)とを比較し,霊長類TS細胞の分化能維持への関与が期待される転写因子を7つ同定した(松本ら,第112回日本繁殖生物学会)。本研究ではこれらの内,上皮系細胞において重要な機能を果たすことが報告されている,GRHLファミリーに属するGRHL1とGRHL2に着目し,macTS細胞における機能を解明することを目的とした。【方法】CRISPR/Cas9システムを用いて,GRHL1とGRHL2をそれぞれノックアウト(KO)したmacTS細胞株を作製し,表現型や遺伝子発現への影響を解析した。【結果】どちらのKO株も,野生型と比較して,個々の細胞が大型で扁平化し,細胞が緩く密集するコロニー形態を示した。細胞増殖率は野生型と比較して有意に減少しており,細胞増殖に関わる転写因子であるTP63のmRNA発現量も有意に減少した。macTS細胞は,dbcAMP添加により合胞体性栄養膜細胞(STB)と絨毛外性栄養膜細胞(EVT)へ分化する。GRHL1 KO株では,未分化時におけるSTBマーカー遺伝子の発現が増加し,GRHL2 KO株では,STBとEVT双方のマーカー遺伝子の発現が増加していた。以上の結果から,GRHL1とGRHL2は,macTS細胞の増殖を促進し,かつ分化を抑制する機能を持つことが示唆された。