日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-10
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受精・発生
PRMT5及びPRMT7によって修飾されたH3R2me2sはマウス受精卵の胚性ゲノム活性化に関与する
*守田 昂太郎畑中 勇輝井橋 俊哉浅野 雅秀宮本 圭松本 和也
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抄録

受精直後の胚は核内のリプログラミングを経て,分化全能性を獲得する。これまでに我々は,ヒストンアルギニンメチル化修飾の一つが受精卵のDNA脱メチル化に必須であることを報告し,広く研究されてきたリシンに加えアルギニンのメチル化がリプログラミングにとって重要な働きを担うことを発見している。近年,アルギニンメチル基転移酵素のPRMT5及びPRMT7が卵子や受精卵で高発現することが報告されているが,受精卵におけるアルギニンメチル化修飾の役割は十分に明らかにされていない。そこで本研究では,PRMT5及びPRMT7によって修飾されるヒストンのアルギニンメチル化に焦点を当て,受精後におけるリプログラミングへの関与を調べた。PRMT5及びPRMT7がメチル化する4種のヒストンの変異体をマウス受精卵にそれぞれ発現させ,内在性ヒストンの核内への取り込みを阻害した結果,H3R2Aの発現によりH3R2me2sの取り込みを阻害した受精卵の発生が2細胞期で停止した。免疫染色の結果から,内在性H3R2me2sはユークロマチンを示唆する領域で認められ,受精卵の転写活性に関与している可能性が考えられた。H3R2Aを発現させた受精卵の雄性前核では,新規RNA合成の指標となるBrUTP及びPol IIの伸長反応の指標となるリン酸化レベルが有意に低下し,受精卵の胚性ゲノム活性化(minor ZGA)で転写されるMuERV-Lの発現量も有意に低下した。さらに,阻害剤やsiRNAによりPRMT5,PRMT7を同時に阻害した場合でも転写活性の抑制が認められた。これらのことから,H3R2me2sは受精卵のminor ZGAに重要な働きをすることが示唆された。次に,minor ZGAに関与することが明らかになっているH3K4のメチル化との関係をH3K4Mの発現で調べたところ,雄性前核におけるH3R2me2sのシグナルが有意に低下した。以上のことから,H3R2me2sはH3K4のメチル化と共にminor ZGAに関わる新たな修飾であることが示唆された。

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