日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-9
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受精・発生
ウシIVF胚盤胞におけるインプリント遺伝子のアレル特異的発現解析
*木村 吉拓金田 正弘岡江 寛明杉村 智史
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抄録

【目的】体外受精卵移植技術(IVF-ET)によって誕生した子牛には,過大子(LOS)が発生しやすいことが報告されている。この原因として,ゲノムインプリンティングの破綻(LOI)によるインプリント遺伝子の発現異常がウシ胎子組織を用いた研究によって示唆されている。本研究では,ウシIVF胚盤胞におけるインプリント遺伝子のアレル特異的な遺伝子発現を解析することで,IVF-ETがゲノムインプリンティングの制御に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】ウシ胚盤胞において発現しているインプリント遺伝子について,NCBIのデータベースからBos.taurusBos.indicusとの間でSNPsを保有している配列を特定し,増幅領域にSNPsを含むようにプライマーを設計した。黒毛和種あるいは交雑種(Bos.taurus)の卵巣から卵丘細胞卵子複合体(COCs)を採取し,ブラーマン種(Bos.indicus)の凍結精液を用いて,体外成熟,体外受精,体外発生を経てF1胚盤胞を作製した。発生培地には5%子牛血清を含むCR1aaを用いた。作製された単一の胚盤胞からゲノムDNA(gDNA)とRNAを抽出した。gDNAおよびcDNAをテンプレートにPCRを行い,目的配列を増幅した。電気泳動で特異的な増幅を確認した後,PCR産物を精製し,サンガーシーケンス法により該当する配列のSNPsにおける波形を解析した。【結果および考察】作製したF1胚盤胞のgDNAを用いてSNPsを確認したところ,着目したインプリント遺伝子のうち,SNRPNにおいてデータベース上のSNPとの一致が確認できた。SNRPNは雄性アレル発現として知られているが,今回cDNAを解析した4つ全てのIVF胚において,雄性アレル発現が認められた。以上,ウシIVF胚盤胞では,LOIを介したSNRPNのアレル特異的発現異常は生じていない可能性が示された。今後,他のインプリント遺伝子や培養条件の違いによるアレル特異的な遺伝子発現を解析する予定である。

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