日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-36
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臨床・応用技術
組換えオステオポンチンによる子宮内膜EGF濃度の正常化が14日目胚の生存性と発育に及ぼす効果
*谷田 孝志佐藤 弘子KYAW Hay Mar栁川 洋二郎田上 貴祥片桐 成二
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抄録

【目的】我々は精漿に含まれるオステオポンチン(OPN)がリピートブリーダー(RB)牛の子宮内膜での上皮成長因子(EGF)濃度異常を解消し,受胎性を回復させることを明らかにしてきた。本研究では,その理由を検討するため,組換えOPN(rOPN)が子宮内における胚の生存性と発育に及ぼす影響を調査した。【方法】ホルスタイン種経産牛のうち,発情後3日目の子宮内膜EGF濃度が低値(< 4.7 ng/g組織重量)を示すRB牛およびEGF濃度が正常な対照牛に,1回目のEGF濃度検査から4~6日目に性腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤を投与し,その7日後にプロスタグランジン製剤を投与して発情を同期化した。発情発見後4~12時間目にRB牛にはrOPN 1 mg(17頭,rOPN群)またはPBS(18頭,PBS群)を,対照牛(18頭,正常群)にはPBSをそれぞれ人工授精用シース管を用いて腟円蓋付近に投与した。発情後3日目にEGF濃度を再測定し,同7日目に凍結融解胚を2~3個黄体側子宮角に移植して同14日目に胚を回収した。【結果】処置後子宮内膜EGF濃度が正常化した牛の頭数(割合)はrOPN群およびPBS群でそれぞれ10頭(58.8%)および8頭(44.4%)であった。胚が回収された牛の割合は処置群間で違いはなかったが,rOPN群と正常群の胚回収率(58.7および 59.6%)はPBS群(32.0 %)に比べて高かった(p<0.05)。また,処置群によらず,EGF濃度が正常化した牛の中で胚が回収された牛の割合およびその胚回収率(77.1および63.5%)は,異常が持続した牛(22.2および16.7%)に比べて高かった(p<0.01)。一方,rOPN群から回収された胚の長径はPBS群と正常群の中間であった。しかし,牛毎のEGF濃度と胚の長径との間に相関はみられなかった。【考察】rOPNは子宮内膜EGF濃度を正常化することで,発情後14日目までの胚の生存性を向上させるが,その濃度の違いは胚の大きさに反映されないことが示唆された。

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