主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第114回日本繁殖生物学会大会
回次: 114
開催地: Web開催(京都大学)
開催日: 2021/09/21 - 2021/09/24
【目的】真核生物の細胞内では輸送小胞を介してタンパク質や膜成分の輸送が行われている。小胞輸送では,輸送小胞が標的膜に繋留されたのちに小胞と標的膜との融合が起こることで物質が細胞小器官や細胞膜へと輸送される。本研究では繋留因子の1つであるExocyst複合体に着目した。Exocyst複合体はヘテロ8量体のタンパク複合体であり,リサイクリングエンドソーム由来の輸送小胞の繋留に重要な機能を持つことが知られている。当研究室の先行研究において,Exocyst複合体の構成因子の1つであるExoc1を雄性生殖細胞特異的に欠損させた(Exoc1 cKO)マウスでは正常な精子形成が見られず,EXOC1がマウス精子形成で重要な役割を果たすことが明らかとなった。最近の研究で,EXOC1はExocyst複合体の構成因子としての機能だけでなく,別の働きも持つ多機能タンパクであることが報告された。そこで,精子形成過程においてEXOC1がExocyst複合体の構成因子として機能しているのか否かを検討することを目的に本研究を実施した。【方法】EXOC1以外のExocyst複合体の構成因子をコードする2つの遺伝子(ExocX,ExocY)のfloxマウスと,雄性生殖細胞特異的にCreを発現するNanos3-Creマウスを交配し,雄性生殖細胞特異的な2系統のcKOマウスを作成し,その表現型を解析した。【結果】ExocX cKOマウス精巣ではExoc1 cKOマウスで見られる異常な細胞塊である凝集合抱体が確認されたが,精子形成は確認された。一方,ExocY cKOマウスではExocX cKOよりも高頻度に凝集合抱体がみられ,精子形成は確認されなかった。以上の結果から,マウス精子形成においてEXOC1は8量体Exocyst複合体として機能するのではなく,Exocyst複合体中の一部の構成因子と協調して機能する可能性が示唆された。今後精子形成が確認されなかったExocY cKOマウス精巣のより詳細な解析を行う予定である。