主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第114回日本繁殖生物学会大会
回次: 114
開催地: Web開催(京都大学)
開催日: 2021/09/21 - 2021/09/24
【背景・目的】精子は凍結過程において様々な傷害を受けやすく,融解後の運動性,IVFに用いた際の受精率や胚発生率の低下につながることが知られている。特にマウスでは,他の動物種に比べ耐凍性が低く融解後の運動性は20%を下回る。これらの低下を最小限に抑えるために精子保護効果を持つ物質が模索されてきた。本実験では浸透圧調整,耐凍性を持つことで知られているベタインに着目した。ベタインは培養細胞の凍結保存において,浸透圧や氷晶形成に対する保護効果が報告されているが精子の凍結保護効果については明らかとなっていない。よって本研究では,凍結液へのベタイン添加によるマウス凍結精子融解後の運動性改善を目的とした。【材料・方法】既存法の凍結液(18%ラフィノース,3%スキムミルク)をコントロール区とし,ベタインをそれぞれ0.5%,1%,2%,4%に調整した凍結液と融解後の運動性を比較した。供試動物にはICR雄マウス(9~12週齢)を,凍結保存容器にはクライオチューブを使用した。凍結融解のプロトコールは理研BRCの「マウス精子の凍結保存方法と凍結精子を用いた体外受精」に準じた。融解1時間後に精子解析システムにて各種パラメーターを解析した。【結果・考察】融解後の運動率は,コントロール区(13.0%)と比較してベタイン1%添加区で19.0%(p = 0.007),2%添加区で18.0%(p = 0.021)と有意に増加した。直線速度,曲線速度,平均速度,直線性,頭部振幅,頭部振動数には有意な差は見られなかったものの(p > 0.05)1%,2%添加区でコントロール区と比較して高値を示した。これらのことからベタインにはマウス精子を凍結傷害から保護する効果があることが示唆された。また,0.5%添加区(運動率:17.0%,p = 0.191),4%添加区(運動率:8.0%,p = 0.218)では有意な差が見られなかったことから保護効果は濃度によって変動し,最も高値を示したベタイン1%が至適濃度であると考えられる。