日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-17
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ポスター発表
ウシ凍結保存精子でのFull-typeハイパーアクチベーションに及ぼすプロテインホスファターゼ阻害剤Calyculin Aの影響
*宮本 菜津子坂瀬 充洋原山 洋
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抄録

【目的】私たちは,人工授精用のウシ凍結保存精子に使用できる「Full-typeハイパーアクチベーション(F-HA)能力を指標とする新規の活力検査法」の開発を進めており,その確立には体外で効率よくF-HAを誘起するための手法が必要である。本研究では,ウシ凍結保存精子でのF-HA誘起に及ぼすプロテインホスファターゼ(PP)阻害剤Calyculin A(CL-A)処理の影響を検討した。またCL-A処理が精子の運動調節因子glycogen synthase kinase(GSK)-3α(51 kDa型)に及ぼす影響を観察した。【方法】ウシ凍結保存精子を洗浄後にCL-A(10~100 nM)を添加したcAMPアナログ含有mKRH液に浮遊させて60~300分間,38.5℃で処理した。処理の前後に試料の顕微鏡動画を撮影し,動画をコマ送り再生して運動率およびF-HA率を調べた。またウェスタンブロッティングにより,CL-A処理がGSK-3αおよびそのSer21でのリン酸化(不活性化)状態に及ぼす影響を観察した。【結果】(運動性への影響)運動率はCL-Aの添加の有無に関係なく処理時間とともに低下したが,F-HA率は60または120分間の処理後にCL-A(10~100 nM)添加区(22.2~28.9%)において無添加の対照区(2.4~3.1%)よりも有意に高い値を示した。(GSK-3αへの影響)処理前の試料ではGSK-3αは明瞭に検出され,そのSer21でのリン酸化は高い状態であった。処理60分間後のCL-A(10 nM)添加区においてGSK-3αの検出量は対照区よりも大きく低下したが,残存したGSK-3αのSer21でのリン酸化状態は対照区よりも高く維持される傾向を示した。(まとめ)短時間(60~120分間)のCL-A処理はウシ凍結保存精子でのF-HAの効率的な誘起に有効であった。またこの処理は精子でのGSK-3αの減少および不活性化維持に関与する可能性が示唆された。

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