日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-18
会議情報

ポスター発表
Thimerosal処理によりウシ精子で誘起される細胞内ストアのCa2+依存的なハイパーアクチベーションの運動様式
*大谷 暁洋坂瀬 充洋原山 洋
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】キャパシテーション精子は,[Ca2+]iを上昇させることで鞭毛運動をハイパーアクチベーション(HA)に変化させて受精に必要な推進力を獲得する。[Ca2+]iの上昇は細胞内ストアおよび細胞外に由来するCa2+に依存するが,Ca2+の由来がHAに及ぼす影響は不明である。Thimerosal(Th)は精子頸部の細胞内ストアにあるIP3R Ca2+チャネルを開口することで,細胞外Ca2+非存在下で精子にHAを誘起する試薬である。本研究では,細胞内ストアのCa2+がHAに及ぼす影響を明らかにするため,細胞外Ca2+非存在下でTh処理されたウシ精子の運動様式を観察した。【方法】ウシ凍結保存精子を洗浄後にCa2+不含mKRHに浮遊させ,Thの添加後に高速ビデオカメラで撮影した顕微鏡動画を用いてHA率および鞭毛屈曲状態を調べた。次にSYBR14で核染色された精子にTh処理を行い,蛍光顕微鏡下でHA精子の運動軌跡を記録した。またcAMPアナログ(cB)・プロテインホスファターゼ阻害剤(CL)処理により細胞外Ca2+依存的に誘起されるHA(細胞内ストア由来のCa2+の関与の有無は不明)においても同様の観察を行った。【結果】HA誘起に適したThの濃度は12.5~50 µMで,その際のHA率は37~42%であったが,3分間以上のHAの持続性では12.5 µM区が優れていた。非対称性の鞭毛屈曲は,Th処理精子では中片部遠位部および主部で観察され,屈曲角度は概ね90°以下であった。一方cB・CL処理精子での非対称性の鞭毛屈曲は中片部と主部の全体で観察され,屈曲角度は多くの精子で90°以上であった。2秒間記録された運動軌跡は,Th処理精子の多くで「小麦の穂や花びら」と類似した形状であったが,cB・CL処理精子の多くでは「四角形や星形」であった。以上の結果から,Th処理により細胞内ストアのCa2+依存的に誘起されるHAは,cB・CL処理により細胞外Ca2+依存的に誘起されるHAと異なる運動様式を示すと考えられる。

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top