日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-36
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ポスター発表
全トランスクリプトーム増幅法を用いたウシ体外受精胚の遺伝子発現プロファイル解析
*向井 天優澁谷 倫加藤井 貴志長谷川 昇司平田 統一澤井 健
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抄録

【目的】ウシIVF胚は体内受精・体内発生(Vivo)胚と比較して受胎率が低く,産子の過大化が高頻度で起こる。これら異常は,体外発生(IVC)培地中の血清成分による遺伝子発現異常が原因とされているが,ウシIVF胚における遺伝子発現プロファイル(個々の胚における様々な遺伝子の発現動態とそれら遺伝子発現異常の集積状況)は不明である。本研究では,全トランスクリプトーム増幅(WTA)法を用いて,ウシIVF胚における遺伝子発現プロファイル解析を行い,IVF胚の機能性評価を試みた。【方法】ウシIVF胚をIVC4日目から,3% 子牛血清(CS),0.1% BSAもしくは0.1% PVA添加条件下で培養した。IVF(各区12胚)およびVivo(10胚)由来の拡張胚盤胞(ExBC)期胚それぞれ1胚から抽出したmRNAを用いてWTAを行い,IGFBP-2, IGFBP-3, OCT-4, CDX2, FGF4, TEAD4およびIFNτ発現量の解析を行った。なお,Vivo胚における発現量の12.5パーセンタイル以下および87.5パーセンタイル以上を発現異常の基準とした。【結果】各遺伝子の発現異常発生頻度は,CS区で0–58.3%,BSA区で0–50.0%,PVA区で8.3–50.0%であった。7遺伝子中3つ以上の遺伝子で発現異常が認められた胚の数は,CS区で5胚,BSA区で2胚,PVA区で4胚であった。遺伝子発現異常が全く認められなかった胚の数は,CS区で1胚,BSA区で4胚,PVA区で3胚であった。本研究の結果から,WTA法により個々のExBC期胚における複数遺伝子(計算上約150遺伝子)の発現量解析が可能であることが明らかとなり,遺伝子発現プロファイル解析はウシIVF胚の異常原因の解明につながる可能性が示された。現在,遺伝子発現プロファイル解析の精度向上とWTAサンプルを用いたRNA-Seq解析によるウシIVF胚の発現異常遺伝子の網羅的探索に取り組んでいる。

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