主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第114回日本繁殖生物学会大会
回次: 114
開催地: Web開催(京都大学)
開催日: 2021/09/21 - 2021/09/24
【目的】哺乳類初期胚の発生は最終分化した配偶子である精子と卵母細胞が受精することにより始まる。初期の発生では受精以前より卵母細胞細胞質中に蓄えられていた母性因子により発生が進行する。しかし,母性因子は発生の進行とともに減少し,1細胞期後期から2細胞期にかけて胚自身のゲノムからの遺伝子発現が見られるようになる。これを胚性ゲノムの活性化(ZGA)という。Pwp1はZGAで発現が急激に増加する遺伝子の一つであり,マウスES細胞の胚様体形成促進に関わることが報告されているが,哺乳類初期胚におけるその役割と機能については明らかとなっていない。そこで,本実験ではエレクトロポレーション法により,1細胞期胚にsiPwp1を導入させることによりRNA干渉を誘導し,Pwp1 ノックダウンが初期胚の発生に及ぼす影響を調べた。【方法】IVF実施の2時間後,受精用培地から回収した受精卵をOpti-memが入った電極内に入れ,エレクトロポレーションによってsiPwp1を導入した。また対照区として,ネガティブコントロールのsiRNAを同様の方法で導入した胚を用いた。siRNA導入胚を受精後96時間まで 培養して発生率を比較するとともに,Pwp1の制御を受けている可能性のあるいくつかの遺伝子の発現量をRT-qPCRにより評価した。【結果】 siPwp1処理区と対照区で桑実期までの発生率には有意な差は認められなかったが,胚盤胞期への発生率は,それぞれ62.3%と84.2%であり,Pwp1のノックダウンによって有意に発生率が低下することが明らかになった(P<0.05)。またsiPwp1処理胚では対照区と比較して,Wnt3とc-Myc の発現量がそれぞれ41.2%と58.6%に有意に減少した(P<0.05)。以上のことから,Pwp1はマウス初期胚の発生において胚盤胞期への分化に何らかの役割を担っている可能性が示唆された。