日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 113
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生殖工学
ゼブラフィッシュ卵子の水および耐凍剤に対する透過性
*神谷 俊光関 信輔葛西 孫三郎枝重 圭祐
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抄録
【目的】魚類卵子は、未だ凍結保存が不可能である。その原因は、卵子の体積が非常に大きく、水や耐凍剤の細胞内外への速やかな透過が困難なためと考えられる。メダカでは、成熟卵子や胚と比べて未成熟卵子の膜透過性が高いことを我々は明らかにした。本研究では、ゼブラフィッシュの成熟卵子と未成熟卵子の水および耐凍剤に対する透過特性を調べ、どちらが凍結保存に適するかを調べた。【材料及び方法】未成熟卵子は成熟雌ゼブラフィッシュの卵巣から回収した。成熟卵子は産卵直前の雌の腹部を指で圧迫して回収した。いずれの卵子も、25℃の75% Leibovitz’s L-15 medium(LM液、239 mOsm/kg)中で平衡化させた。《実験 1》卵子を水で希釈したLM液(102, 161, 191 mOsm/kg)あるいはSucrose 添加75% LM液(400, 800, 1200 mOsm/kg) に25℃で60 分間浸して平衡化し、その相対的体積から卵子の固形分含量を算定した。また25℃のSucrose 添加75% LM液(400, 800 mOsm/kg)中での相対的体積の経時的変化から水透過性を調べた。《実験 2》卵子を25℃の8% エチレングリコール、10% グリセロール、10% プロピレングリコールあるいは9.5% DMSOを添加した75% LM液に60 分間浸し、相対的体積の経時的変化から耐凍剤透過性を調べた。【結果】固形分含量は、未成熟卵子(65%)の方が成熟卵子(74%)よりも少なかった。水透過係数は、未成熟卵子が成熟卵子と比べて4倍以上高かった。また、未成熟卵子ではいずれの耐凍剤も透過したが、成熟卵子では耐凍剤はほとんど透過せず、透過係数の算出が困難であった。これらの結果から、ゼブラフィッシュ卵子においても、未成熟卵子の方が成熟卵子より水および耐凍剤に対する透過性が高く、凍結保存に適していると考えられる。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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