[目的]多くの系統のマウス初期胚は体外培養した際、高率で胚盤胞にまで発生するが、AKRマウス初期胚は体外培養するとほぼ完全に2細胞期で発生停止を起こし、この現象は2-cell blockとして知られている。第96回日本繁殖生物学会大会において、近交系のAKRとC57BLマウスを用いた交配実験の結果、2-cell blockには細胞質因子が影響しており、それには2つの遺伝子座の関与が示唆されることを報告した。そこで本研究では、AKRとC57BL胚間で前核置換を行い2-cell blockへの細胞質因子の関与を確認するとともに、連鎖解析を利用して2-cell blockを引き起こす原因遺伝子座を同定することを目的とした。[方法]AKRおよびC57BL前核期胚は、自然交配により交尾の確認された雌マウスの卵管より採取した。AKRとC57BL前核期胚を用いて前核置換を行い、得られた再構築胚をWhitten培地にて37˚C、5% CO2 in airで120時間体外培養し、胚盤胞への発生率を観察した。さらに、AKRとC57BL間の交配により得られたF1マウスをAKRへ戻し交配し、得られた戻し交配個体群を用いて連鎖解析を行った。[結果]AKRとC57BL前核期胚を用いた前核置換実験の結果、前核がAKRかC57BL由来かにかかわらず、AKRの細胞質をもつ再構築胚は2-cell blockを起こし、C57BLの細胞質をもつ再構築胚は正常に発生することが確認された。このことから、2-cell blockには細胞質因子が関与していることが考えられた。戻し交配個体を用いて連鎖解析を行った結果、原因遺伝子座の一つは第4染色体の54番地から63番地付近に位置していることが示唆された。第4染色体のこの付近に胚発生や細胞周期に関連する候補遺伝子が存在するかを現在検索中である。