日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 20
会議情報
卵成熟
ブタ前胞状期卵胞から取り出したブタ卵胞卵子顆粒膜細胞複合体の体外培養
*橋本 周大住 哉子辻 陽子原馬 尚子宮田 悠子福田 愛作森本 義晴
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

[目的]卵巣組織には様々な発育ステージの卵胞が存在しているが、その多くは消失し、第二減数分裂中(MII)期まで進行できる能力(成熟能)を持つにいたる卵子はごく少数である。卵胞から取り出したウシ卵母細胞を4% Polyvinylpyrrolidone (PVP)添加培養液を用いることにより、成熟能を獲得し、産子に発育することが報告された。その際、ドーム様構造の形成が成功の目安となることも報告された。そこで、本研究では卵胞から取り出したブタ卵子顆粒膜細胞複合体(OGCs)を用い、PVP添加濃度(0-8%)ならびに培養ディッシュのコーティングの有無(Falcon 1007 vs 3002)がOGCsのドーム様構造の形成に及ぼす影響を調べた。また、ドーム様構造を形成したOGCsから得られた卵子の成熟能を調べた。 [方法]屠体未成熟雌ブタ卵巣から、直径500-700 μm、<500 μm (前胞状期卵胞)の卵胞を単離し、OGCsを取り出した。TCM 199に1 μg/ml E2, 50 μg/ml アスコルビン酸, 10 μg/ml insulin, 6.7 ng/ml sodium selenite, 5.5 μg/ml transferrin ならびに3 mg/ml BSA添加したものをOGCsの培養液として、TCM 199に E2, FSH, hCG, FBSを添加した培養液を成熟培養に使用した。OGCsの体外培養は14日間、体外成熟培養は44時間、38.5℃, 5% CO2飽和湿度下で行った。[結果] 2% PVPで培養したOGCsのドーム様構造形成率(27%)は他のPVP濃度区に比べ優位に高かった(0-9%, P<0.05)。また、コーティングディッシュで培養したOGCsのドーム様構造の形成率(83%)はそうでない場合に比べ有意に高かった(47%, P<0.05)。ドーム様構造を形成したOGCsから得られた卵子は全てGV期であった(n = 14)。これらの卵子を成熟培養を行ったところ、67%の卵子がMII期に達した(n = 18)。一方、体外培養を行わずに、成熟培養を行った場合、MII期に達した卵子は2.2% (n = 45)であった。本実験の結果から、直径500 μm以下の卵胞から取りだした卵子でも体外培養により成熟能を獲得することが示唆された。

著者関連情報
© 2005 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top