日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 32
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卵子形成
ガラス化保存された成体マウス卵巣組織の前胞状卵胞内卵母細胞からの正常産子作出
*香川 則子桑山 正成中田 久美子眞鍋 昇久米 新一加藤 修
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抄録
[目的] 優秀な遺伝形質が証明された家畜由来産子の大量生産や、野生の絶滅危惧種の保全を目的として、前胞状卵胞内卵母細胞の発育培養や凍結保存が検討されている。これまでマウス、ラットおよびブタの胎児、新生児からの産子作出例はあるが、性成熟した個体由来からの報告はない。本研究では、ガラス化保存された成体マウス卵巣組織の前胞状卵胞内卵母細胞の個体発生能を検討した。[方法]10週齢BDF1マウス卵巣を前胞状卵胞のみを含む小組織片へ細断し、Cryotopによる超急速冷却ガラス化保存法(桑山, 2000)を一部修正して用い、凍結保存を行った。卵巣組織片を融解後、免疫不全(SCID)マウス腎漿膜下に移植した。対照区として非凍結卵巣組織を同様に移植、比較した。移植10日後に腎を摘出し、発達した胞状卵胞を回収した。卵巣組織の一部はパラフィン切片を作製し、組織学的評価により卵胞発育状況を調査した。さらに、胞状卵胞より回収されたフルサイズのGV卵子を既報のIVM-ICSI-IVC系に供し、得られた2細胞期胚をレシピエントに移植して正常な産子への発育能を検討した。また、本法によって得られた産子を性成熟後、それぞれ交配させ、繁殖能を検討した。[結果]ガラス化保存/融解後の卵巣内卵母細胞の生存率は100%であった。組織学的解析により、移植10日後には卵胞基底膜周囲に血管網が密に形成され、顆粒層細胞の増殖が顕著な胞状卵胞への発育が示された。回収されたGV卵子の体外成熟率はガラス化区43%vs.非ガラス化区73%、受精率はそれぞれ84% vs.80%であった。胚移植後、ガラス化区10頭(16.7%)vs. 非ガラス化区14頭(28.6%)の正常産子が得られ、全産子が性成熟、交配後に妊娠、出産した。これらの結果から、成体マウスの前胞状卵胞内卵母細胞は、ガラス化保存により高率に凍結保存することが可能で、さらに、融解後、体内/体外培養法と組合せることにより、正常な個体へと発生することが明らかとなった。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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