地域漁業研究
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論文
昭和初期における貯水池築造と入会的養魚権の調整問題
群馬県藤岡市矢場池の事例
関口 覺増井 好男
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2007 年 47 巻 2-3 号 p. 167-187

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抄録

昭和初期,群馬県藤岡地区に国庫補助による群馬県営の大型灌漑用施設・三名川貯水池が築造された。このことでその配水区域内に所在する江戸初期に築造された溜池・矢場池を永年慣行的に利用してきた地元2集落(矢場・東平井両地区)の入会的水利権,養魚権が否定されることとなった。小稿は,2集落が入会溜池とする矢場池に対して今日まで入会的権利意識を継続させてきた歴史的経緯を以下の諸点から明らかにし溜池の利用と保全に関する今日的課題を考察した。

1. 矢場池は昭和初期,藤岡広域灌漑用水施設の三名川貯水池築造にともなって,これを維持・管理する三名川貯水池耕地整理組合の管理下にあることが,群馬県によって指示された。

2. 矢場池を長年慣行的に灌漑用水,養魚池として利用してきた地元2集落は,これらの入会的権利が剥奪された状態になり,生活基盤を守るため群馬県,三名川貯水池耕地整理組合に激しく抵抗することになり,これらの権利に対する双方の認識は今日にあっても依然対立する構図にある。

3. 特に入会的養魚権とそれに基く養鯉利用収入は,集落が矢場池を補修・改修し,維持管理するうえで大きな影響を持ち,暖昧な権利関係が許される社会的環境状態にない。

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© 2007 地域漁業学会
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