地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
韓国における日本産養殖マダイの価値
輸入動向と食文化を中心に
柳 珉錫山尾 政博
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 51 巻 3 号 p. 43-66

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抄録

近年,韓国の日本産マダイ輸入が顕著に増加している。また,国内のマダイ生産量も急速に伸びている。本論文では,養殖マダイの貿易と生産の動向を規定する諸要因を明らかにし,今後の活魚輸入の展開を予測していくことである。具体的な手順は,第1に,韓・日両国の養殖マダイの生産および貿易動向と食文化などを分析すること。第2に,韓・日両国の養殖環境を比較検討することで,貿易量が変化していく原因を明らかにすること,第3に,以上の分析を通して,今後の韓国と日本の間のマダイの貿易を展望することである。

韓国が日本からマダイ輸入をはじめたのは1980年代後半だが,現在では,国内マダイ消費量の約20~60%を日本から輸入している。日本産マダイが韓国市場を席捲するようになったのは,その競争力の強さにある。韓国の日本産マダイ輸入量は過去10年の間,年平均25%の高い増加率を見せた。日本産養殖マダイが韓国市場に成功的に進出したのは日本の漁場環境がよく,養殖技術が進んでいるため,生産コストと品質の側面で競争力を確保しているためである。また,韓国の国民所得水準の向上と韓国人のマダイ食文化も日本産養殖マダイの輸入量増大に影響を与えた。韓国人は昔からマダイを好んで消費してきたし,幸運の魚として認識してきた。今後,日本産養殖マダイの貿易は輸入量がやや減少または,現状を維持する調整(横ばい)期を経た後,再び漸増が予想される。韓国のマダイ輸入量が変化する主な要因として,国内マダイ消費量の変化,それと日本の円に対する韓国ウォンの為替レートの変化があげられる。

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© 2011 地域漁業学会
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