地域漁業研究
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Print ISSN : 1342-7857
論文
養殖マダイの価値創造に関する生産者の取り組み
金尾 聡志
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 51 巻 3 号 p. 85-104

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抄録

マダイ養殖は40年以上の歴史があり,この間に生産技術は発展し,個々の分野ではある程度技術の確立がなされてきた。現在,生産者は,それぞれの経営戦略に基づいてそれらの技術を選択・応用しながら,独自の魚を作り上げている状況にある。一方,量販店では,価格が高く品質・価値の高いこだわり商品,手頃な価格で品質も良く売れ筋の量販商品,特売など安さで売る価格訴求商品といった品揃えをおこなっており,生産者がこれらに対応した商品を作っているかどうかが課題となる。

このため,本稿では,愛媛県マダイ養殖生産者の3つの事例を取り上げ,生産段階における商品学的なアプローチとして,いわゆるモノづくりとしてのマダイ養殖に立ち返り,生産者が養殖マダイの商品価値を高めるためどのような技術を選択し生産しているのか,生産技術に重点を置いた分析をおこなった。これらの事例から,養殖マダイの価値創造については,生産者がターゲットやポジショニングをはっきりと意識し,戦略を明確にして必要な技術を選択・応用しながらコア・コンピタンスを確立し,ニーズに合った商品を作り上げていくことが重要であるということができる。なお,マダイ養殖の生産技術は未だ改良の余地があり,今後の課題として,低魚粉餌料の導入やエドワジエラ症の対策が求められる。

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© 2011 地域漁業学会
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