地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
漁協女性部の組織・運営体制づくりとその課題
愛媛県南予地域における事例をもとに
藤田 昌子若林 良和
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 56 巻 1 号 p. 1-31

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抄録

本研究では,愛媛県南予地域で活動している解散の危機を乗り越えてきた漁協女性部を事例とし,漁協との関係性に着目しながら,女性部が持続可能な活動をするための組織・運営体制のしくみを考察し,本事例から得られた持続可能な女性部の組織・運営体制のモデル化を試みることを目的とする。調査方法は,遊子漁協女性部の部長,および同漁協代表理事組合長の2名に対する聞き取り調査である。女性部が持続的に展開していくためには,主体性を重んじた組織・運営体制に再編する必要があり,その柱は「運営主体」「参加方法」「運営方法」「運営単位」の4つである。具体的には「漁協主体」から「女性部主体」,「強制参加」から「自由参加」,「特定の人のみの参加」から「全員参加」「地区制」から「部会制」への転換である。さらにその組織・運営体制を安定化・強化するものとして,「漁協」「行政」「企業,教育機関など」との協働による外部資源,「社会的評価」が必要であることを明らかにした。そして,漁村地域の発展には地域の水産業を核とし地域特性を活かした地域づくりが不可欠で,漁協と女性部が果たすその役割は大きく,さらに女性部は漁協経営の原動力ともなる。縮小化,空洞化する漁協女性部の問題を漁協全体の問題として捉え,漁協経営のなかに位置づけ,支援を早急に講じる必要があることを指摘した。

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© 2015 地域漁業学会
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