地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
論文
福井県におけるミニボート問題の現状
東村 玲子
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 56 巻 3 号 p. 137-152

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抄録

ミニボートとは,長さ3m未満,エンジン出力2馬力以下の船を指し,免許不要のため誰でも操船出来る。一方で公的なルールは一切ないことから,海面利用の基本的ルールを知らない人も多く,航行範囲の制限もないため制度上は無制限の沖合への航行や,夜間の航行も可能である。また,ミニボートがあまりにも小さいが故に,漁船のレーダーにも写らないなど,ミニボート利用者側にとっても危険な状況にある。漁業者はミニボートと衝突したり,ミニボートを転覆させたりすると漁船側の過失になるとの認識があり,また救助にあたる必要もあることから,ミニボートを避けながら航行・操業を行っている。このことから,漁業者はミニボートは邪魔者という考えが強くなっている。本稿は,福井県内の漁協への聞き取り調査,乗船調査等を通じて,ミニボート問題の実態を明らかにした。ミニボートの安全性確保の問題は全国共通のものと考えられる。現在,あまり海難事故が起こっていないのは,漁業者側の努力が大きいが,それが反ってミニボート利用者の危機管理意識を甘くしていると推察される。この安全性の問題については航行範囲など全国共通のルールが必要であると考えられる。一方で,地域ごとに資源管理上の問題や航行方向の慣習に関する問題など異なるものもあり,こうした漁業者の「暗黙のルール」は,明文化して,ミニボート利用者を含む漁業者以外の海の利用者に広く伝える必要がある。

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© 2016 地域漁業学会
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