2018 年 58 巻 3 号 p. 152-159
水産物における環境認証制度の取り組みが国際的に一般化しつつある。MSCはその代表的存在である。しかし日本ではまだ歴史が浅い。本稿ではその日本での最初の取り組み事例である京都府機船底曳網漁業連合会における認証取得事例を題材とし、認証取得の経緯やその販売状況を概観すると共に、その可能性や問題点さらには今後MSC認証が日本で発展する条件を考察した。当事例の認証対象はアカガレイである。調査の結果、MSC認証を得たことで大手流通業者が新たな買い手となり、より大きな市場にアクセスできる可能性が生まれていることが明らかとなった。一方、莫大な経費の負担、大きな需要に対する供給量の不足という問題が発生していることも明らかになった。この事例から、MSCが日本でさらに展開するためにはより大型の漁業が適切であること、経費負担をカバーできるだけのプレミアム価格を形成できうる市場が必要であること、が示唆された。(なお、2017年12月より、当漁業における認証は一時停止されている)