湖沼は,河川と海域に比べ水質環境基準の達成状況は低く,さらなる水質改善が望まれているが,流入水の滞留時間が長いことや底泥に汚濁物質が蓄積していることから,水質の改善は容易でない.しかしながら,近年では下水道等の汚濁負荷対策の進展に伴い,汚濁負荷が減少するとともに,富栄養化の状態に変化が生じている.本研究では,流域の汚濁負荷対策実施状況が異なる湖沼に着目し,底泥の特性について調べるとともに,汚濁負荷と底質特性との関係について検討を行った.その結果,底泥表層間隙水中の栄養塩類濃度と栄養塩類の溶出速度が相関を示し,間隙水中の濃度は溶出速度を推測する有効な指標であることおよび,湖面積に対するリン負荷の大きさとリン溶出速度との間に相関関係が見られ,汚濁負荷対策の進展によりリン溶出速度も低下すると考えられることが明らかとなった.