東京湾は赤潮が慢性的に発生する富栄養化域である.栄養塩の排出負荷は減少しているものの赤潮発生との因果関係が見出しにくい水域のひとつである.本研究では赤潮判定基準とされている物質(赤潮指標)をモデル化し,モデルの説明率の変化から東京湾湾奥部における第5次水質総量規制と赤潮との関係ついて類推した.東京湾水質調査結果を電子化したデータベースを用い,1986年度-1998年度のデータから逐次選択法を用いて赤潮指標PON(溶存態有機炭素)を目的変数とする安定かつ高説明率をもつ重回帰モデルを決定したところ気温,pH,溶存酸素,DOC,全リン,塩分を説明変数とするモデルのR
2adj(.補正されたモデルの説明率)は0.772となった.そのモデルを 1999年度から 2003年度の新規データへと適用したところ各年度の R2(モデルの説明率)はおよそ0.75となり,新規データは既存モデルによりよく説明され得た.一方で,第5次水質総量規制施年2004年度からはR
2が大幅に減少し,総量規制の導入による環境変化がモデルに影響を与えた可能性が示唆された.
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