2015 年 44 巻 8 号 p. 452-459
福島第一原子力発電所の事故後,放射性物質に関するモニタリングが必要となっている.本研究では湖沼底質を対象とした試料採取方法に焦点を当て,福島県内の湖沼においてグラブ採泥器と柱状採泥器を用いて底質中の放射性セシウム濃度を調査した.調査は2013年に秋元湖と沼沢湖の同じ調査地点において両採泥器を用いて底質試料を採取し,グラブ試料及び柱状試料より得られたデータの比較を行った.柱状試料より濃度とインベントリーを算出し,グラブ試料の底質採取深さを推定した.今回の柱状試料の結果から放射性物質は底質表層で検出されており,グラブ採泥器による採取は試料中のセシウム濃度に不確かさを生ずることになると考えられた.以上のことから採泥器の選択は重要であり,詳細な放射性物質の調査において,底質の採取は柱状採泥器を用いるべきであると考えられた.