1982 年 11 巻 7 号 p. 475-482
環境問題の解決に対して従来からさまざまなアプローチがなされてきた.しかしそれらの多くは事後的, 対症療法的なものであった.いわゆるシステムズアプローチの有効性が指摘されてはいるものの, 現象の予測・解明に重点が置かれていたのではないだろうか.環境問題の特性を考えるならば, 予防的・総合的アプローチをとるべきである.
予防的・総合的アプローチとして, 本研究ではFault Tree Analysisを試みた.環境破壊それ自体をFault Treeでモデル化し, 発生過程を表現したものである.この目的は, 1) 対象とするシステムの構造特性, 2) 問題発生に至る要因の組み合せ, を事前に把握することにある.対象システムの特性に応じて, 問題の未然防止に対して何をなすべきかを示すことである.
本研究では水俣病を例としてFault Tree Analysisを行なった.人為的・社会的・自然的要因を同一モデルに組み込み総合的にモデル化した.これにより発生過程の特異性がモデル上からも明らかとなり, 発生過程の中でその予防上ポイントとなる要因も把握された.