環境技術
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児島湖周辺の水環境の生態毒性スクリーニング
岡村 秀雄羅 栄青山 勲
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1995 年 24 巻 4 号 p. 196-202

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抄録

水環境には種々雑多な化学物質が混在し, そこに生息する生物ひいては生態系に対して複雑な影響を及ぼしている.そこで, 実際の水環境において生態毒性を及ぼしている化学物質の化学的, 毒性学的データを把握することにより生態系における化学物質の管理が可能になると思われる.本研究では―連の短期バイオアッセイを用いて水環境の生態毒性のスクリーニングを行なうことを目的とした.調査地域として岡山県南部の児島湖周辺水域を選定し, 16地点において表流水および底質を1993年に4回採取した.表流水中の有機性物質を溶存態および懸濁物質への吸着態として抽出し, また底質中の有機性物質を極性の異なる2種類の有機溶媒により抽出した.これらの抽出試料の生態毒性を5種類の短期バイオアッセイを用いて評価した.
生態毒性試験には分解者としての細菌および酵母を用いた寒天プレート試験, 一次生産者としての緑藻を用いた藻類増殖阻害試験, 一次消費者としての甲殻類を用いた急性遊泳阻害試験, 陸生生態系の一次生産者としての高等植物を用いた幼根伸張阻害試験を行なった.細菌および酵母に対する影響は底質試料についてのみ認められ, ほぼ全地点の底質が酵母に対して有意な阻害を示した.藻類に対する影響は懸濁物質の毒性が強かった.甲殻類に対しては冬季を除いてほぼ全地域にわたる表流水の毒性が強く, 夏に採取した試料では全地点で死亡率100%であった.このことから, 農業活動による水系への影響が示唆された.高等植物に対しては懸濁物質と底質の毒性が強かったが, 阻害率は比較的低かった.複数の試験により毒性をスクリーニングできたのは, 湖内の表流水と湖内および河口域の底質であり, これら水域における有機性物質による底質汚染が顕著に示された.

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