2023 年 2 巻 p. 10-16
スフィンゴ脂質の生合成の第1段階の重要な酵素であるセリン・パルミトイル転移酵素のサブユニット(SPT2)のヒト脳局在について,健常高齢者とアルツハイマー型認知症(AD)患者剖検例を用いて免疫組織化学染色にて定性評価した.健常コントロール脳では,SPT2はニューロンの細胞質および核に局在していた.AD脳では,SPT2はニューロピル(ニューロン間網状組織部),老人斑の変性神経突起,細胞内神経原線維変化(iNFT)などの特徴的病理像の部位へと主な局在が変化していた.二重免疫蛍光染色によって,NFTにおいてSPT2とタウタンパク質(HT-7)の共存が示された.さらに,反応性アストロサイトにおいてSPT2とグリア線維性酸性蛋白,ならびに軸索においてSPT2とリン酸化ニューロフィラメントタンパク質の共存性が示された.本研究結果は,AD患者のNFT形成などの疾患特異的病理変化におけるSPT2の関与を示唆している.