脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
経験
Sensory Interactionに変化をきたしたと考えられる視野障害症例
青柳 敏之
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2013 年 13 巻 p. 53-58

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抄録

重症頭部外傷後, 視野障害, バランス能力の低下をきたした症例を経験した. 日常生活に支障のない程度の視力があると言われており, 身体機能は高いにも関わらず, 視野障害による恐怖から視覚を要する日常生活は介護者に依存的になっており, 手をつないでの誘導が必要で, 動作も緩慢であった. バランス能力の低下を感覚選択問題(sensor selection problem)によるものと考え, 感覚間相互作用(Sensory Interaction; 以下SI)への介入を行った. SIの評価はClinical Test of Sensory Interaction for(and) Balance(以下, CTSIB)で行い, バランス能力の評価をFunctional Balance ScaleまたはBerg Balance Scale(以下, FBS)で行い, 視力検査は3m法で行った. 本症例に対し約30分間のGentile's taxonomyに基づく段階付け治療介入を実施した. 恐怖心を与えることなく, SIを再構築するべく, 徐々に支持面を小さくしながら視覚を使用する課題を実施し, 変化する環境条件に対する視覚の関与を促した. 介入後に再評価を実施し, 介入前評価との比較からその効果を検討した. なお, 介入前評価から再評価までを同日に行った. 結果, 介入後の視力検査, CTSIB, FBSに改善を認め, 歩行などの視覚を要する日常生活にも恐怖を訴えなくなり, 動作もスムースになり, 介助者の誘導も必要としなくなった.

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© 2013 脳機能とリハビリテーション研究会
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