脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
13 巻
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教育講座
レクチャー
症例報告
  • 岡本 善敬, 山本 哲, 武下 直樹, 沼田 憲治
    2013 年 13 巻 p. 17-22
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    lateropulsionとは, 無防備な側方への傾倒により立位・歩行が困難となるが, 短期間に改善をみる症候である. また, 延髄外側梗塞を責任病巣としWallenberg症候群に伴って出現することが多いとされる. 今回, Wallenberg症候群を認めるも, 主症状であるlateropulsionが遷延した症例を経験した. 症例は60歳男性. MRIでは左の延髄背外側とともに小脳虫部に梗塞を認めた. これらはいずれも背側脊髄小脳路から情報を受け, 無意識下での姿勢制御に関与する領域であることから, lateropulsionが遷延する要因になったと考えられる.

  • 山本 哲, 岡本 善敬, 武下 直樹, 對間 博之, 津田 啓介, 沼田 憲治
    2013 年 13 巻 p. 23-28
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    Thalamic Astasia(視床性失立症; 以下TA)は, 一側の視床病変によって前庭神経系障害に類似した立位保持困難の特徴を示し, 通常数日から数週間で自然軽快する症候である. 運動麻痺, 感覚障害, 運動失調は認めず, あっても軽度であるとされる. TAの症例報告は少なく, その原因など不明な部分が多い. 今回, 両側視床の梗塞巣が要因となりTAが遷延したと考えられる症例を経験した. 前庭情報の中枢性投射経路は, 前庭神経核および視床の高位で, 両側性に投射されるという特徴がある. このために, 一側の視床病変ではTAが一過性で回復良好であるのに対し, 両側の視床病変ではTAが遷延すると推察される. 今回の報告は, 視床病変を有する患者の立位バランス障害を検討する資料として, 意義あるものであると言える.

総説
  • 野々村 聡
    2013 年 13 巻 p. 29-39
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    人間の思考, 随意意志, 情動, 認知, 言語などのいわゆる高次脳機能のしくみは極めて複雑, 難解であるが, その作動原理は解明が期待される最も重要な研究課題のひとつである. 本稿では, 多様な脳の高次機能の中でも「意思決定decision-making」に焦点を当て, 霊長類(サル)を用いた電気生理学的な研究を紹介することで, さまざまな大脳皮質の領野や大脳基底核, ドパミン系などにおける高次情報処理のしくみを概観していく.

  • 松田 真悟
    2013 年 13 巻 p. 41-47
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    恐怖記憶の研究は心的外傷後ストレス障害(PTSD)や強迫性障害など恐怖記憶と関連の深い精神疾患の治療の発展に寄与する可能性が高いことから, 動物実験の結果をヒトへと応用するトランスレーショナルリサーチも盛んに行われている. ここ10年間での研究の発展は目覚ましく, 恐怖記憶の形成, 恐怖記憶の消去, 恐怖記憶の再発機構が明らかになりつつある. どうやら, 記憶は時間依存的に安定性を変化させ, 想起されることでその安定性が再び可塑性を持つようだ. そこで, 本稿では恐怖記憶の形成過程について“時間”に焦点を置いて解説し, さらに, 恐怖の消去及び消去後の再発に関する最近の研究について紹介する.

経験
  • 串田 英之, 澤田 和也, 森下 耕一郎
    2013 年 13 巻 p. 49-51
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    今回, 足漕ぎ車椅子を重度パーキンソン病症例1名に対し, 1日1回15分で3日間使用した. 使用前後の歩行動画記録を基に歩行解析した. 結果, 使用前と比較すると歩行速度は70%増加, 歩幅は56%拡大, 歩数は36%減少した. また歩行軌跡では, 使用前はすくみ足や尖足が観察されていたが, 使用後は軽減した. 足漕ぎ車椅子のペダリング運動で得られる, 視覚・聴覚・運動感覚から得られる情報が, 大脳基底核に抑制された視床を活性化させたことにより, 歩行能力が改善したのではないかと考察した.

  • 青柳 敏之
    2013 年 13 巻 p. 53-58
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    重症頭部外傷後, 視野障害, バランス能力の低下をきたした症例を経験した. 日常生活に支障のない程度の視力があると言われており, 身体機能は高いにも関わらず, 視野障害による恐怖から視覚を要する日常生活は介護者に依存的になっており, 手をつないでの誘導が必要で, 動作も緩慢であった. バランス能力の低下を感覚選択問題(sensor selection problem)によるものと考え, 感覚間相互作用(Sensory Interaction; 以下SI)への介入を行った. SIの評価はClinical Test of Sensory Interaction for(and) Balance(以下, CTSIB)で行い, バランス能力の評価をFunctional Balance ScaleまたはBerg Balance Scale(以下, FBS)で行い, 視力検査は3m法で行った. 本症例に対し約30分間のGentile's taxonomyに基づく段階付け治療介入を実施した. 恐怖心を与えることなく, SIを再構築するべく, 徐々に支持面を小さくしながら視覚を使用する課題を実施し, 変化する環境条件に対する視覚の関与を促した. 介入後に再評価を実施し, 介入前評価との比較からその効果を検討した. なお, 介入前評価から再評価までを同日に行った. 結果, 介入後の視力検査, CTSIB, FBSに改善を認め, 歩行などの視覚を要する日常生活にも恐怖を訴えなくなり, 動作もスムースになり, 介助者の誘導も必要としなくなった.

  • 大森 彩, 青柳 敏之
    2013 年 13 巻 p. 59-62
    発行日: 2013/08/09
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    今回, 小脳梗塞により運動機能の低下と高次脳機能障害・感情障害を呈したCerebellar cognitive affective syndrome(CCAS)と考えられる症例を経験した. 小脳症状の改善を認めたにも関わらず, CCASによる二次的な注意機能・認知機能の低下と感情障害は残存した. このことは, 高次脳機能や行動・感情の正常な機能は, 小脳および前頭葉がそれぞれ単独の機能として成立しているのではなく, 両者間での情報統合によるものであることを反映しているためと考えられる.

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