2015 年 15 巻 p. 23-28
一般的に運動無視は脳卒中発症後早期に消失すると言われ,長期間症状が残存したという報告は少ない.今回,脳梗塞後3年以上運動無視が残存していると疑われる症例に対し理学療法を実施した.症例は軽度の運動麻痺と,様々な高次脳機能障害(失語症,注意障害,失行)を呈していたが,それだけでは説明できないADL場面上での患側肢の低使用・不使用を認めた.片麻痺機能検査と感覚検査,線分二等分課題,Albert線分末梢課題の結果より,症例に生じている患側肢の低使用・不使用は運動無視によるものであると考えられ,長期に渡り運動無視が残存する症例の存在が示唆された.症例に生じている症状を整理することは,リハビリテーションを進めていく上で重要であると考える.