脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
15 巻
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レクチャー
研究報告
  • 新國 彰彦, 小村 豊, 沼田 憲治
    2015 年 15 巻 p. 5-15
    発行日: 2015/07/03
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    私たちの視知覚は一様ではない。たとえ,物理的に同一のものを見ていても,今,求められている状況によって,その情報を行動へ利用できるかどうかは左右される。しかし,直面する状況が異なった結果,主観として経験される帰結までも変わり得るのか,これまで明らかではなかった。そこで,本研究では,同一の観察者に,視覚対象の存在を問う検出課題と,刺激属性を判別する弁別課題を別個に行い,両者の視知覚を客観的な行動成績と主観的な確信度評定の両面から検証した。同一刺激に対する行動成績を比較すると,検出成績よりも弁別成績の方が高かった。しかし,正しく判断しているという確信度は,検出課題において高く表出された。このような客観指標と主観指標の逆転現象が,なぜ起こり得るかを明らかにするために,各課題において,行動成績に利用した情報をどの位,主観評定へ反映できているかというメタ認知感受性を算出した。その結果,検出課題の方が,行動成績に利用した情報をより正確にモニターし,主観評定へ反映できていることがわかった。以上から,私たちの視知覚系は,物理的に同一の視覚情報を受け取ったとしても,課題要求に応じて,質的に異なる情報処理を行い,また,その情報が主観的経験として変換する過程においても,量的に異なる確からしさが付与されていることが推察された。

  • Kotaro TAKEDA, Yutaka TOMITA, Abbas ORAND, Genichi TANINO, Hiroyuki MI ...
    2015 年 15 巻 p. 17-21
    発行日: 2015/07/03
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    We developed an affordable and portable tDCS device for clinical studies. The block diagram and minimum number of necessary components of the device, and code of the stimulation program were also presented. The low-cost instrument may improve the quality of rehabilitation at a hospital or home. In addition, the high portability of the device may be useful for gait rehabilitation.

症例報告
  • 今村 武正, 高杉 潤
    2015 年 15 巻 p. 23-28
    発行日: 2015/07/03
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    一般的に運動無視は脳卒中発症後早期に消失すると言われ,長期間症状が残存したという報告は少ない.今回,脳梗塞後3年以上運動無視が残存していると疑われる症例に対し理学療法を実施した.症例は軽度の運動麻痺と,様々な高次脳機能障害(失語症,注意障害,失行)を呈していたが,それだけでは説明できないADL場面上での患側肢の低使用・不使用を認めた.片麻痺機能検査と感覚検査,線分二等分課題,Albert線分末梢課題の結果より,症例に生じている患側肢の低使用・不使用は運動無視によるものであると考えられ,長期に渡り運動無視が残存する症例の存在が示唆された.症例に生じている症状を整理することは,リハビリテーションを進めていく上で重要であると考える.

  • ~発症後13週目までの経過の報告~
    若旅 正弘, 高崎 友香, 沼田 憲治
    2015 年 15 巻 p. 29-35
    発行日: 2015/07/03
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    今回,橋梗塞後に認知機能障害を呈した症例を経験したため報告する.症例は60歳代,女性,橋に限局した脳梗塞を発症した.発症後3週目において,病前には認められなかった種々の行為・行動の異常が観察された.症例の背景,観察所見,神経心理学的検査の結果から,症例は今回の橋梗塞により認知機能障害(注意障害,記銘力障害,遂行機能障害)を呈したと考えられた.行為・行動の異常,認知機能障害は発症後13週目においても残存しており,そのためADL,IADLの一部に見守りを要したと考えられた.脳幹損傷後に認知機能障害を呈した症例の報告は少なく,慢性期まで経過を追ったものは極めて稀である.したがって,本症例報告は貴重かつ興味深い報告であると思われる.

総説
  • 今井 樹, 小森 規代, 武田 湖太郎
    2015 年 15 巻 p. 37-43
    発行日: 2015/07/03
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,ALS)は神経難病のひとつであり,重篤な運動機能障害を呈する進行性の神経変性疾患である.これまでALSについては運動面の障害が重視されてきたが,認知機能や言語機能などの高次脳機能が低下することが報告されるようになってきたことはあまり知られていない.本稿はALSにおける運動系の脳機能についてMagnetic resonance imaging (MRI),Diffusion tensor imaging(DTI),Voxel-based morphometory(VBM)による報告を紹介するとともに,ALS患者にみられる高次脳機能障害についての近年の知見を紹介する.

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