脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
経験
高次脳機能障害を持つ主婦への訪問型家事支援の実践例
~高次脳機能障害支援センターの取り組み~
揚戸 薫武藤 かおり阿部 里子大塚 恵美子
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2016 年 16 巻 p. 25-33

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抄録

高次脳機能障害は、本人が病識を持つ事が難しく、「見えない障害」とも言われ、周囲から誤解を受け易いという特徴を持つ。当高次脳機能障害支援センターは、この「見えない障害」の症状を明らかにし、本人、家族、支援者と共有することで、次の支援体系に繋ぐ役割を担う。高次脳機能障害者の生活実態調査ではADLは7割前後が自立しているが、契約・手続きなどの社会参加の自立は1割、金銭管理や調理の自立は2割余りと報告されている。今回、「出産後、家事が上手くいかなくなった。夕飯の支度が夫の帰宅に間に合わない。」という主訴を持つ、脳挫傷の既往がある主婦に対し支援を行った。評価では調理自体には問題はなく、遂行機能障害や注意障害により1日の家事の計画や献立作成に難渋していることが判明した。そこで代償手段を取り入れた結果、それを用いることで徐々に円滑に家事が行える様になり、さらに地域のヘルパー利用に繋ぐ事で「夕飯の支度が夫の帰宅に間に合うようになる」という目標を達成し、家事の一部自立が継続できた。高次脳機能障害者は変化する生活状況への適応の困難を抱える。病院や施設の生活では検出され難い実生活場面での問題点も、脳機能との関係で整理し、リハビリテーション専門職が関わることは、IADLの向上に大きな意味を持つと考える。

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© 2016 脳機能とリハビリテーション研究会
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