2017 年 17 巻 p. 9-16
脳卒中片麻痺患者の運動機能予後予測に対し拡散テンソル画像解析の有用性が報告されているが,解析対象とする関心領域(region of interest: ROI)は一定していない。本研究は,皮質下脳卒中片麻痺患者の運動機能予後を最も反映するROIを明らかにすることを目的とした。対象者は回復期リハビリテーション病棟入院の初発皮質下脳卒中片麻痺患者23名。退院時の手指brunnstrom recovery stage(BRS)をもとにBRSⅢ以下を運動麻痺重度群(10名),BRSⅣ以上を軽度群(13名)に分類し、入院時に撮像した拡散テンソル画像から,重度群と軽度群のfractional anisotropy(FA)値をtract-based spatial statistics(TBSS)を用いて比較した結果,重度群は軽度群と比較し損傷半球の内包後脚および上放線冠で有意にFA値が低下していた。次に,運動機能予後と最も関連するROIを明らかにするために,TBSSにて有意差を認めた内包後脚および上放線冠,先行研究で多用されている大脳脚のそれぞれの左右領域からFA ratio(rFA)を求め退院時BRSとの相関分析を行ったところ,内包後脚rFAが退院時BRSと最も強い相関を認めた。これらの結果から,皮質下脳卒中患者の運動機能予後を最も反映するROIは内包後脚であると考えられた。