社会福祉学
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論文
「地方社会事業職員制」の検討―昭和戦前期社会事業行政職員の実状―
小笠原 慶彰
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2020 年 60 巻 4 号 p. 1-13

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抄録

社会福祉史において,戦前・戦後の「断絶」と「連続」という課題がある.たとえば戦前の役割を戦後に「連続」させたと推測できるにもかわらず関心を払われていないテーマの一つに,社会事業主事がある.厚生省年史では戦後の社会福祉主事の先駆的存在としているが,詳しく説明されていない.そこでその法的根拠である地方社会事業職員制の概要を明らかにし,次に何人かの社会事業主事の人物像を探った.さらにその養成制度である社会事業研究生も検討した.その結果,戦前の社会事業行政専門職といえる社会事業主事は,1944(昭和19)年の時点でいったん「断絶」したと捉えなければならないとわかった.しかしその養成制度が戦後の社会福祉専門職教育に与えた影響や社会事業主事を務めた人物が戦後の社会福祉界で果たした役割による「連続」も無視できない.この点を検討することが今後の研究課題になる.

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© 2020 一般社団法人 日本社会福祉学会
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