2017 年 17 巻 p. 39-44
経皮的な末梢神経電気刺激の付加と一次運動野(M1)への磁気刺激を組み合わせたPaired associative stimulation(PAS25;刺激間隔25 ms)は,片麻痺治療に有用な介入となることが期待されている。これまでに,健常者を対象とした,PAS25による運動誘発電位(MEP)の振幅の変化は,同条件のPAS25においても増大するという報告と減少するという報告がある。我々は,左および右半球のM1に対し2連続経頭蓋磁気刺激を行い,短母指外転筋で計測されたMEP振幅の左右比に着目することによって,より安定したPAS25評価方法の開発を目的に実験を行った。健常成人10名を対象とし,PAS25前後に,左右M1への単発および2連続TMSによるMEPの計測を行い,皮質脊髄路の興奮性を反映する単発TMSによるMEPの振幅と,2連続TMSにより生じたMEP振幅の左右比を求めた。結果,PAS25による単発TMSのMEP振幅の変化は一定した傾向を認めなかった。一方MEP振幅の左右比は,PAS25前と比較しPAS25後に,全対象に値の増大が観察された。このことよりMEP振幅の左右比は,安定したPAS25評価方法であり,ばらつきの大きい単発TMSによるMEP振幅より優れた評価方法であると考えられる。