日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: OR-4-5
会議情報

組織障害
重粒子線の骨代謝におよぼす影響
*澤尻 昌彦瀧波 修一溝江 純悦谷本 啓二
著者情報
キーワード: 炭素線, 軟骨, MMP-13
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
目的:炭素線、ガンマ線を実験動物の骨に照射し組織学的観察をおこなったところガンマ線照射骨に比べ破骨細胞の減少と小型化に加えて骨梁の肥厚が見られた。骨梁内に軟骨が残存し骨梁の肥厚,骨量の増加要因と考えられた。従前の研究で,炭素線照射群では骨芽細胞の産生する破骨細胞誘導因子RANKL mRNAの発現抑制が示唆されたが,骨梁の肥厚は破骨細胞の成熟阻害に加えて軟骨の吸収阻害の可能性が示唆され,炭素線照射による軟骨成熟因子と軟骨基質吸収因子の産生能変化を検索した。

材料と方法:炭素線照射後の骨反応解析のため,骨芽細胞様MC3T3-E1細胞を炭素線,ガンマ線および対照群として,照射群には2, 4, 6 Gyの炭素線あるいはガンマ線を照射した。炭素線とガンマ線の影響を比較するため照射後の totalRNAを採集してCbfa1, MMP 13をRT-PCRにて測定した。さらに実験動物に炭素線,ガンマ線を部分照射し骨の免疫染色によってMMP-13の局在を調査した。

結果:同線量照射において炭素線照射群よりもガンマ線照射群でCbfa1およびMMP-13 mRNAは発現が促進された。また炭素線照射では線量依存性にCbfa1とMMP-13 mRNA発現が抑制された。実験動物に対する部分照射ではガンマ線照射骨,非照射骨では骨梁辺縁の類骨あるいは新生骨,破骨細胞の近傍に発現が見られるが,炭素線照射群においてはMMP-13による発色が骨梁内部に淡く見られ,残存する軟骨周囲にMMP-13の発現が見られた。軟骨吸収が不十分なまま石灰化が進行し軟骨が骨梁内に閉じこめられた可能性が示唆された。

考察:MMP-13のmRNAの変化と局在化の変化からMMP-13による軟骨吸収作用の阻害による骨量の増加が疑われ, Cbfa1の変化がRANKL, MMP-13の変化,そして骨量の変化に影響を与えた可能性が示された。
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top