抄録
DNAは損傷部位において突然変異が誘発される。この突然変異誘発機構にDNA損傷部位を乗り越えてDNA 複製を行うTLS(translesion synthesis) DNA ポリメラーゼが関与している。突然変異誘発機構はDNA修復機構であるとともに染色体の維持に必要不可欠な機能である。TLS DNA ポリメラーゼの一部は、一次構造上の類似モチーフの存在からYファミリー と分類される。ショウジョウバエで同定されたdRad30A, dRad30B, dRev1は このファミリーに属している。我々の研究室ではin vitro の系で、これらいずれの遺伝子産物も損傷を乗り越えるDNA合成活性を持つ事が明らかにしてきた。近年、人でREV1タンパク質がYファミリー のTLS DNA ポリメラーゼ(Polh, Poli, Polk)と相互作用する事が明らかとなった。また、これらのTLS DNA ポリメラーゼはPCNAとも相互作用する。このことは、TLS DNA ポリメラーゼがDNA損傷部位において重要なDNA複製機能があるとこを示唆している。我々は、突然変異誘発機構を調べるために、ショウジョウバエのTLS DNA ポリメラーゼの機能解析を行っている。我々はショウジョウバエにおいてdRad30A, dRad30B, dRev1の相互作用を調べた。dRad30Aは、dRev1と相互作用するのに人より1箇所多い2箇所のFF配列が重要であることがわかった。またdRad30Aは人から保存されているdRev1のC末で相互作用する事がわかった。dRad30Bは、dRev1と複数のドメインで相互作用し、dRev1のBRCTドメインで相互作用する事がわかった。また、イーストのツーハイブリッド法により幾つかの候補遺伝子も同定した。その遺伝子のうち一つについて解析を行ったのでこれについても報告したい。