日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P2-48
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放射線治療生物学(感受性・高LET・防護剤・増感剤・ハイパーサーミア・診断)
末梢性NMDA受容体の活性化と腸管放射線障害
*渡邉 雅彦高井 伸彦安藤 興一鵜澤 玲子松本 孔貴平山 亮一岡安 隆一小島 周二
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キーワード: NMDA受容体, 炭素線, 腸管障害
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抄録
 腸管陰窩細胞(クリプト幹細胞)はその増殖能の高さゆえ放射線感受性に富み,重粒子線の照射によって線量依存的に減少,高線量域では上皮細胞供給の停止により腸管死を起こす。子宮や膀胱など腹部がんへの照射は,標的腫瘍のみならずその近傍の正常組織である腸管にも,少なからず障害を起こしうることから,腸管を防護する薬剤の臨床応用は,より効果的で副作用の少ない重粒子線治療に寄与すると考えられる。興奮性アミノ酸の受容体であるNMDA受容体の拮抗薬は,放射線による正常組織障害を抑制するという報告があることから,我々は腸管に存在する末梢性NMDA受容体が放射線照射によって誘起される種々のイベントに関与しているという仮説を立て,in vivoの実験にて検証を試みた。
 同位体標識されたNMDA受容体の非競合的拮抗薬[3H]MK-801を14週齢C3H雌マウスに尾静脈投与し,各臓器への集積の経時的変化を調べたところ,腸管集積は投与30分後に最大となった。また9 Gy炭素線(290MeV/u, 20keV/µm)を無麻酔下にて全身照射したマウスにおける[3H]MK-801の腸管集積は,照射24時間後まで増大するものの,それ以降は減少する傾向が確認された。MK-801はNMDA受容体と共役しているカルシウムチャネルのブロッカーであり,受容体への結合は活性化の指標となることから,9 Gy炭素線照射24時間後に腸管NMDA受容体が最も活性化され,腸管放射線障害の発現に関与していることが示唆された。さらにMK-801投与群および非投与群のマウスで,炭素線照射による腸管クリプト数の線量依存的変化の違いを比較し,MK-801のクリプト防護効果について検証した。
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© 2006 日本放射線影響学会
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