日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P2-47
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放射線治療生物学(感受性・高LET・防護剤・増感剤・ハイパーサーミア・診断)
炭素線による脳内グルタミン酸遊離の機序解明
*山本 浩一山本 隆史森安 彩子野原 恭子安藤 興一大和谷 厚
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抄録
中枢神経系は放射線感受性が低い組織であるが、低線量の被曝によっても認知障害など機能的な障害が生じることが知られている。中枢神経系内で過剰に遊離したグルタミン酸は神経死の原因となることから、照射によって遊離したグルタミン酸が神経機能に変化を与えていることが予測される。これまで我々は炭素線が脳内グルタミン酸遊離に及ぼす影響を脳微小透析法を用いて検討してきた。その結果、全身あるいは頭部照射によって、グルタミン酸は照射後有意に増加することを見出した。このことは、炭素線が直接中枢神経系に作用してグルタミン酸遊離を誘発されることを示唆している。しかし、この結果からでは、どの様な機序を介してグルタミン酸が遊離するのか詳細は明らかになっていない。そこで、グルタミン酸の由来を明らかにするため、脳透析に用いる人工脳脊髄液(CSF)からのCa2+の除去、グリア細胞からのカルシウム非依存的な遊離を抑制するcarboxyphenylglycine (CPG)の投与、グリア細胞機能阻害剤のL-aminoadipatic acid (L-AA)の投与、グルタミン産生酵素阻害剤のmethionine sulfoximide (MSO)の投与、グルタミンを添加したCSFを用いてMSOの投与の各条件が炭素線頭部照射後のグルタミン酸遊離に及ぼす影響を検討した。その結果、CPG投与ならびにグルタミンをCSFに添加した状態でのMSO投与の場合にのみ照射後1時間以内に有意なグルタミン酸の遊離増加が認められたが、それ以外の条件ではグルタミン酸遊離増加が完全に抑制された。以上の結果から、炭素線によって増加するグルタミン酸は神経細胞から生理的に遊離したものであることが示唆された。
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© 2006 日本放射線影響学会
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