日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS2-4
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高LET放射線によるDNA損傷と細胞応答
高LET重イオンによるDNA損傷へのKu80の反応
*和田 成一松本 義久大戸 貴代浜田 信行原 孝光舟山 知夫坂下 哲哉深本 花菜柿崎 竹彦鈴木 芳代細井 義夫鈴木 紀夫小林 泰彦
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抄録
高LET重イオン照射による細胞致死効果は低LET放射線照射よりも高いことが広く知られている。この高い細胞致死効果の原因のひとつは高LET 重イオン照射による修復困難な、または修復不可能なDNA損傷によると考えられている。しかし、この損傷の修復反応や修復過程のどの段階で修復が阻害されるかなど未だ詳細には解明されていない。哺乳動物細胞のDNA2本鎖切断修復は主に非相同性末端結合であり、この修復機構ではKu70/80がDNA損傷を認識することによって修復が開始すると考えられている。そこで、高LET 重イオンによるDNA損傷に対する修復過程をKu80の反応を指標として調べた。細胞は、 Ku80の変異したxrs5細胞を形質転換し、GFPを融合したKu80を発現する細胞(xrs5-GFP-Ku80)とGFPのみを発現する細胞(xrs5-GFP)を用いた。照射は原子力機構・高崎のTIARAにおいて高LETのArイオン(LET=1610 keV/μm)を照射した。xrs5-GFP-Ku80とxrs5-GFP細胞の生存曲線はほぼ同程度の感受性が観察され、この結果はArイオン照射によって生じたDNA損傷はKu80によって修復困難であることを示唆している。DNA損傷に対するKu80の反応を調べるためγH2AXと GFPシグナルを観察したとき、照射10分後では共局在するシグナルは観察されたが、照射20分後にはGFPシグナルが不明瞭になり共局在するシグナルは観察されなかった。この結果からKuは高LET重イオン照射によるDNA損傷を認識するが、修復出来ずに損傷部位から解離すると推察された。このように高LET重イオンよるDNA損傷の修復困難なメカニズムを解明することによっても高LET 重イオンによる新たな生物効果の知見が得られると考えられる。
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© 2006 日本放射線影響学会
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