抄録
【目的】今年でチェルノブイリ原子力発電所の事故から20年をむかえるが、事故由来の放射性セシウム(Cs)が現在も土壌中に残存していることが知られている。我々は、チェルノブイリ近くのジトミール地方の食品のうち、Cs-137濃度が高いとされるキノコと主食として多く食されるジャガイモについての放射性Cs濃度の測定を行った。
【方法】試料は、2003年にウクライナの研究者から灰の状態で提供を受け、これをU-8容器に10mmの高さに封入してGe検出器を用いて計測を行った。預託実効線量は、この結果からこれらの食品を1年間摂取した場合と仮定してICRP Publ.67の線量換算係数を用いて求めた。さらに、これらの食品を採取した近辺の土壌の計測も行った。土壌は、0から10cmまでの深さを5段階、10から20cmまでを2段階とした乾燥土壌であり、その深さ方向7段階の放射性Cs濃度を計測した。また、食品に取り込まれるとされる深さ0から6cmまでの土壌を混合して食品と同様に計測を行った。
【結果・考察】キノコではCs-137がK-40濃度を上回って検出され、Cs-134については少量が検出された。Cs-137のキノコ摂取による成人の預託実効線量は0.9mSvとなった。また、ジャガイモについては、Cs-137がキノコに比べると少ないが検出された。しかしながら、ウクライナでのイモ類の供給量は日本に比べて5倍程と多量に食されており、7試料平均での成人の預託実効線量は1.5mSvとなった。また、土壌では、表層部にCs-137が多く検出され、深くなるに従って減少した。現在でも放射性Csは土壌から食品へ移行しており、その影響について検討する。