日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS8-4
会議情報

マイクロビームを用いた研究の進展
細胞質へのX線照射による低線量高感受性の抑制
*前田 宗利宇佐美 徳子小林 克己
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
[目的]我々は、放射光単色X線(5.35 keV)マイクロビーム細胞照射装置を用い、低線量放射線の生物影響研究を行っている。この装置では、5ミクロン角以上の任意のビームサイズのX線マイクロビームを細胞あるいは細胞核の一部に照射し、それらを個別に追跡して照射効果を検出することができる。昨年度の大会において、本装置を用いて10ミクロン角のマイクロビームで細胞核を照射した細胞の生存率において、細胞集団を照射した場合(ブロードビーム照射)と比べ、低線量高感受性が明らかに増強されることを報告した。今回は、50ミクロン角のマイクロビームを用い、単一細胞の全体を照射し、細胞核を照射した場合の生存率と比較し、細胞質への照射効果が低線量高感受性に与える影響について検討を行った。
[方法] 2000個のV79細胞を専用ディッシュに撒き、単一細胞の細胞核を10 ミクロン角、あるいは、細胞全体を50ミクロン角のX線マイクロビームによって照射した。照射後60時間培養し、計数した個々の照射細胞のコロニーあたりの細胞数から細胞の生死を判定し生存率を測定した。細胞核平均吸収線量を基に生存率をプロットし、線量-生存率曲線を作成した。
[結果・考察]50ミクロン角のX線マイクロビームで単一細胞全体を照射した場合の生存率曲線は、ブロードビーム照射によって得られた生存率曲線とよく一致しており、個別コロニー観察法がこれまでの方法と比較できる結果を与えることが示された。また50ミクロンのビームで照射した場合には、細胞核を照射した場合と比べ、明らかに低線量高感受性が抑制された。低線量高感受性の発現は、細胞のDNA修復機構と密接に関係していると考えられている。放射線照射された細胞質において生成されるなんらかのシグナルが、細胞の修復活性を誘導しDNA損傷の修復を促進させることによって低線量高感受性が抑制されることが示唆された。
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top