日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS8-6
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マイクロビームを用いた研究の進展
放射光X線マイクロビーム細胞照射装置を用いたDNA2本鎖切断修復タンパク質の可視化解析
*冨田 雅典前田 宗利宇佐美 徳子松本 義久小林 克己
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抄録
DNA2本鎖切断(DSB)は、DNA損傷の中でもっとも修復困難であるとともに修復ミスの原因となりやすい重篤な損傷である。このDSBを修復する経路として、ヒトをはじめとする高等真核生物では、少なくとも非相同末端結合(NHEJ)と相同組換え(HR)が存在すると考えられている。これまでの研究において、数多くのタンパク質が、NHEJ、HRに関与することが報告されている。
近年、リン酸化したヒストンH2AXをはじめとするDSB修復に重要なタンパク質が、DNA損傷部位に集積してフォーカスを形成する現象が注目されている。蛍光抗体法やGFP融合タンパク質を用いて、放射線照射後のフォーカス形成を観察する手法は、DSB修復機構を解明する手段として有効である。しかしながら、通常のX線発生装置では、細胞全体に照射されるため、損傷部位に特異的なDSB修復タンパク質の初期応答を厳密に捉ることは困難である。我々は、X線によって生じたDSBに対する修復タンパク質の応答機構を解明するため、高エネルギー加速器研究機構・放射光科学研究施設の放射光マイクロビーム細胞照射装置を用い、細胞核の一部をマイクロビームで照射し、さまざまなDSB修復タンパク質のリン酸化・局在変化を蛍光抗体法により観察した。
 まず、リン酸化ヒストンH2AXに対する抗体を用い、局所照射した部位にDSBが生成していることを確認した。次に、照射30分後に固定したヒト正常細胞MRC-5を用い、さまざまDSB修復タンパク質の照射部位への集積を観察した。その結果、X線照射後にフォーカスを形成すると報告されているタンパク質のうち、NHEJの初期過程に関与するDNA依存性プロテインキナーゼや、HRにおいて重要なNBS1、ATM等の集積は確認できたが、一部集積しないタンパク質も見出された。細胞周期チェックポイントに関与するタンパク質の結果等も合わせて報告する。
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© 2006 日本放射線影響学会
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