抄録
p53(+/+)マウス8週齢時に3Gyの線量を照射すると、8から10日後にT-cell receptor (TCR) 変異頻度は最大となり、以後速やかに減少し、1ヶ月後には自然発生レベルに戻る。その後、52週齢までにTCR変異頻度は自然発生レベルを維持しているが、60週齢以降加齢に伴う突然変異の誘発と思われるTCR変異頻度の上昇がみられ、その傾向は若年時に3Gy照射したマウスでは顕著であった。一方、p53(+/-)マウスの3Gy照射群では40週齢よりTCR変異頻度の再上昇がみられ、遅延型突然変異誘発においてもp53遺伝子の関与が示唆された (Igari, K., et. al., Radiat Res, 166:55-60, 2006) 。前回の学会で、遅延型突然変異は、アポトーシス活性の低下により、異常細胞が排除できなくなるためであり、それは活性型p53タンパク発現量の低下に起因することを報告した。さらにp53遺伝子の存在する11番染色体の転座率が増加していることから、p53遺伝子機能の異常によるものと示唆した。そこでp53遺伝子配列異常の検出するために当初、まるごと脾臓細胞からDNAを抽出し、Exon 4, Exon 5-6, Exon 7, Exon 8-9に分けてPCR産物を作製し、遺伝子配列の解析を試みていたが、異常をみいだすことはできなかった。今回、TCR変異頻度の指標としている脾臓細胞中のCD3-CD4+細胞であり、その選別を試みた。まず磁気分離システムにてCD4+細胞をpositive selectionし、さらにフローサイトにてCD3-細胞分離し、最終的にCD3-CD4+細胞のp53遺伝子配列異常の検出を試みたので報告する。